フードデリバリーで「時給1,800円だった」と聞いても、その数字だけでは本当に効率よく稼げたか分かりません。配達中の時間だけで割っていたり、ガソリン代や車両維持費を引いていなかったりするからです。
自分の稼働を比較するなら、売上をオンライン時間で割る「売上時給」と、経費を引いて待機時間まで含める「実質時給」を分けて計算します。
この記事では、フードデリバリー配達員の実質時給を計算する方法を、具体例と記録項目を使って解説します。
※この記事でいう「実質時給」は、個人で稼働結果を比較するための独自指標です。雇用契約上の賃金や最低賃金を判定するものではありません。税務上の必要経費は個別事情で異なるため、判断に迷う場合は税務署や税理士へ確認してください。
実質時給の計算式
基本の計算式は次のとおりです。
実質時給 =(配達の売上-稼働にかかった経費)÷ 実稼働時間
ここで重要なのは、分母へ配達中だけでなく注文待ちや店舗待ちを入れることです。分子からは、その日の配達に使った燃料代や駐車料金などを差し引きます。
比較用として、次の3つを分けて記録すると原因を分析しやすくなります。
| 指標 | 計算方法 | 分かること |
|---|---|---|
| 売上時給 | 売上÷実稼働時間 | 経費を引く前の効率 |
| 実質時給 | (売上-経費)÷実稼働時間 | 手元に残る金額に近い効率 |
| 配達1件単価 | 売上÷配達件数 | 1件当たりの売上 |
Uber Eatsでは、配達リクエスト受信時に予定配送料、推定時間、受け取り場所、引き渡し場所が表示されます。ただし、1件ごとの推定時間だけでは、その前後の注文待ちや配達エリアへ戻る時間まで把握できません。1日の開始から終了までを記録する必要があります。
実稼働時間に含める時間
実稼働時間は、原則としてアプリをオンラインにして案件を受けられる状態だった時間です。
含める時間
- 注文を待っていた時間
- 店舗へ向かった時間
- 店舗で商品を待った時間
- 注文者へ届けた時間
- 配達後に飲食店街へ戻った時間
- 案件を探すためにエリアを移動した時間
除外する時間
- アプリをオフラインにした食事休憩
- 私用の買い物や移動
- 自宅で稼働していない時間
- 配達と無関係な長時間の休憩
たとえば11時から15時までオンラインにし、途中でアプリを切って30分食事をした場合、実稼働時間は3時間30分です。
注文を受けてから完了するまでの合計だけを使うと、待機時間が消えて時給が高く見えます。注文が鳴らなかった時間も、その地域と時間帯を評価するための重要なデータです。
1日の組み方はフードデリバリー配達員の1日の流れも参考にしてください。
実質時給から引く経費
その日の稼働で直接発生した金額と、複数日にわたって使う道具の按分額を分けて記録します。
その日に発生する経費
- バイクや軽自動車のガソリン代
- 電動自転車やスマートフォンの充電代
- 配達中の駐車料金
- 有料道路料金
- レンタサイクルや車両レンタル料金
複数日に分けて考える経費
- 車両の点検、修理、タイヤ交換
- 配達バッグ、スマートフォンホルダー、雨具
- 車両保険や配達用保険
- 通信費
- 車両や高額な機材の購入費
私用と配達の両方で使うスマートフォンや車両は、全額をそのまま引くのではなく、走行距離や使用時間など合理的な基準で配達分を分けます。国税庁も、家事関連費は取引記録などに基づき、業務に直接必要な部分を明らかに区分できる場合に、その部分を必要経費にできると案内しています。
なお、実質時給を把握するための管理上の経費と、確定申告で認められる必要経費が必ず一致するとは限りません。
車両別に見落としやすい経費
同じ売上でも、使用する車両によって手元に残る金額は変わります。車両ごとに記録する項目を決めておきましょう。
自転車・電動自転車
通常の自転車は燃料代がかかりませんが、タイヤ、ブレーキ、チェーンなどの消耗品が必要です。電動自転車では充電代に加え、バッテリーの交換費用も長期的なコストとして考えます。レンタサイクルを使う場合は、利用料金をその日の経費に入れます。
原付・バイク
ガソリン代だけでなく、オイル、タイヤ、ブレーキ、点検、保険などを記録します。走行距離が増えるほど整備頻度も上がるため、給油額だけを引くと実質時給を高く見積もる可能性があります。
軽自動車
燃料、駐車料金、保険、車検、税金、タイヤなど、固定費と変動費の両方があります。私用でも使う場合は、配達で走った距離を記録し、配達分を区分します。
車両間で比較するときは、売上だけではなく、同じ期間の経費と実稼働時間をそろえてください。
実質時給の計算例
バイクで8時間稼働した日の例です。
| 項目 | 金額・時間 |
|---|---|
| 配達報酬 | 11,400円 |
| チップ | 600円 |
| 売上合計 | 12,000円 |
| オンライン時間 | 8時間 |
| ガソリン代 | 900円 |
| 駐車料金 | 300円 |
| 整備費の按分 | 400円 |
| 通信費などの按分 | 100円 |
| 経費合計 | 1,700円 |
売上時給は次のとおりです。
12,000円 ÷ 8時間 = 1,500円
経費を引いた実質時給は次のようになります。
(12,000円-1,700円)÷ 8時間 = 1,287.5円
この場合、売上時給は1,500円ですが、実質時給は約1,288円です。仮に配達中の5時間だけで売上を割ると2,400円になりますが、3時間の待機や移動が消えるため、実態を表しません。
経費を日ごとに按分する方法
毎日支払わない費用は、月単位でまとめてから稼働日数で割ると簡単です。
1日当たりの固定経費 = 1か月の配達用経費 ÷ その月の稼働日数
たとえば配達に使った通信費、保険料、メンテナンス費の合計が月6,000円で、月20日稼働した場合は、1日300円として計算します。
車両を私用でも使う場合は、配達走行距離と総走行距離を記録して配達分を分ける方法があります。計算基準を途中で都合よく変えず、領収書や利用記録を残してください。
記録する項目
稼働終了後に、次の項目を1行で記録します。
- 日付、曜日、天候、エリア
- 使用したサービスと車両
- オンライン開始・終了時刻
- オフラインにした休憩時間
- 配達件数と売上
- チップやキャンペーン
- 走行距離
- 燃料、充電、駐車料金
- 固定経費の按分額
- 売上時給と実質時給
1日だけでは、偶然の高額案件やキャンペーンに結果が左右されます。最低でも同じ曜日・時間帯を複数回記録し、中央値や週平均で比較しましょう。
記録は表計算ソフトや家計簿アプリでも構いません。「日付、実稼働時間、売上、経費、実質時給」を必須列にし、天候やエリアをメモ欄へ残します。入力項目を毎回変えないことが、正確に比較するコツです。
注文待ちを減らすため複数サービスを使う場合は、フードデリバリー配達員の掛け持ち完全ガイドで同時オンライン時の切り替え方を解説しています。
売上時給・実質時給・手取りは同じではない
売上時給は経費を引く前、実質時給は稼働経費を引いた後の効率を示します。一方、最終的な手取り額を考える場合は、所得税や住民税、社会保険料なども関係します。
売上時給:配達アプリ上の売上効率
実質時給:経費を引いた稼働効率
最終的な手取り:税金や社会保険料なども反映した金額
そのため、実質時給がそのまま銀行口座へ残る金額になるわけではありません。まず日々の稼働比較には実質時給を使い、税金を含む年間の収支は別に管理すると分かりやすくなります。
実質時給を比較するときの注意点
キャンペーンを分ける
通常報酬とキャンペーンを一緒にすると、キャンペーンがない日の見込みを誤ります。チップ、追加報酬、紹介料などは別欄に記録します。
車両をそろえて比較する
自転車とバイクでは、対応距離も経費も異なります。時間帯やエリアだけを比較したい場合は、同じ車両条件で比べます。
最高記録ではなく平均を見る
最も稼げた1日ではなく、複数日の実質時給を比べます。どのサービスを使うか迷っている方は、配達員向けフードデリバリー4社比較も確認してください。
よくある質問(FAQ)
Q. 注文を待っている時間も時給計算に入れますか?
A. 入れます。アプリをオンラインにし、案件を受けられる状態なら実稼働時間です。待機を除くと実際より高い時給になります。
Q. 自宅でオンラインにして待っている時間は含めますか?
A. 依頼が来たらすぐ出発できる状態なら含める方法が実態に近いでしょう。ただし、私用を続けていて実質的に稼働していない時間は除き、毎回同じ基準で計算してください。
Q. 配達バッグ代は購入日に全額引きますか?
A. 日々の効率比較では、想定使用月数や稼働日数で分けると日ごとの数字が極端になりません。税務上の処理は購入金額や使用状況によって異なります。
Q. チップは売上に含めますか?
A. 含めますが、通常報酬とは別に記録します。Uber Eatsではチップは配達後に明細へ反映されます。
Q. 何日分を比較すればよいですか?
A. まずは同じ曜日・時間帯を3〜5回記録し、平均または中央値を比較してください。天候やキャンペーンが違う日は注記します。
まとめ
実質時給は「売上から経費を引いた金額」を「待機を含む実稼働時間」で割ります。配達中だけを分母にしたり、燃料代や維持費を無視したりすると、実態より高く見えます。
毎回同じ基準で時間、売上、経費を記録し、最高記録ではなく複数日の平均で時間帯・エリア・サービスを比較しましょう。




